企業は健康経営銘柄を目指すべき?健康経営のメリット・認定制度・資格・始め方
記事(全体向け)
2026年8月16日
健康経営とは
健康経営はどの程度普及している?
数字でみると、健康経営は一部の大企業だけの取り組みから、中小企業を含む全国的な企業施策へ裾野を広げています。健康経営優良法人の初回認定である2017では、大規模法人部門235法人、中小規模法人部門318法人(追加認定後)の計553法人でした。2026では、大規模法人部門3,765法人、中小規模法人部門23,085法人の計26,850法人となり、初回の約49倍です。
| 指標 | 2017 | 2025 | 2026 |
|---|---|---|---|
| 大規模法人部門の認定数 | 235法人 | 3,400法人 | 3,765法人 |
| 中小規模法人部門の認定数 | 318法人(追加認定後) | 19,796法人 | 23,085法人 |
| 認定総数 | 553法人 | 23,196法人 | 26,850法人 |
直近1年でも、2025から2026にかけて認定総数は3,654法人、約15.8%増えています。制度参加の入口を見ると、健康経営優良法人2026では、大規模法人部門の健康経営度調査回答数が4,175法人、中小規模法人部門の認定申請数が23,485法人でした。
| 部門 | 制度参加を示す公表値 | 最終認定数 | 数字の読み方 |
|---|---|---|---|
| 大規模法人部門 | 健康経営度調査回答:4,175法人 | 3,765法人 | 回答のみで認定申請をしない法人も含まれるため、単純な「取得率」は算出できません。 |
| 中小規模法人部門 | 認定申請:23,485法人 | 23,085法人 | 単純比較では約98.3%ですが、公式に公表された合格率ではありません。 |
なお、健康経営が広がっていることと、すべての企業が健康経営銘柄を目指すべきことは別です。健康経営銘柄は東京証券取引所の上場会社を対象とする選定制度です。非上場企業や中小企業では、まず自社の健康課題に合った取り組みを優先し、必要に応じて健康経営優良法人などの認定取得を検討します。
参照:ACTION!健康経営「関連資料(2017認定実績)」 / 経済産業省「健康経営優良法人2025」 / 経済産業省「健康経営優良法人2026」 / ACTION!健康経営「2026速報値」
健康経営の定義
経済産業省のポータルサイト「ACTION!健康経営」では、健康経営を「従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」と説明しています。従業員の健康を個人任せにせず、企業理念や事業戦略と結び付け、必要な人材・時間・費用を投じ、成果を評価して改善する考え方です。
たとえば、離職が多い企業であれば、単発の健康イベントを増やすだけでなく、長時間労働、管理職のマネジメント、相談体制、休暇の取りやすさ、復職支援などを分析し、離職につながる健康・職場要因へ優先的に対応します。
健康管理・福利厚生・労働安全衛生との違い
| 概念 | 主な目的 | 具体例 |
|---|---|---|
| 健康管理 | 従業員一人ひとりの健康保持・疾病予防 | 健康診断、受診勧奨、保健指導、健康相談 |
| 福利厚生 | 生活支援や働きやすさ、従業員満足の向上 | 休暇制度、食事補助、運動施設の利用補助 |
| 労働安全衛生 | 労働災害・健康障害の防止と法令遵守 | 産業医・衛生管理者、衛生委員会、作業環境管理 |
| 健康経営 | 健康課題への投資を通じた人と組織の持続的な活性化 | 経営方針、推進体制、課題分析、施策、KPI、評価・改善 |
まず法令遵守を土台にする
健康経営が求められる背景
さらに、2026年4月1日からは、職場における治療と就業の両立を促進するために必要な措置を講じることが、事業主の努力義務となりました。相談体制や就業上の配慮を整えることは、健康経営の実務とも密接に関係します。
健康経営のメリットと注意点
健康経営による効果は、施策の内容、対象、職場環境、経営層の関与、評価期間によって異なります。以下は「期待される効果」であり、取り組めば自動的に同じ成果が出るという意味ではありません。
健康経営の評価・認定制度
健康経営優良法人認定制度
健康経営優良法人認定制度は、優良な健康経営を実践する法人を「見える化」する制度です。「大規模法人部門」と「中小規模法人部門」があり、認定要件を満たした法人が日本健康会議により認定されます。
「各部門の上位500法人だけが認定される」という理解は誤りです。上位500法人等に付く名称が、ホワイト500、ブライト500、ネクストブライト1000です。
| 部門 | 通常の認定 | 上位区分 |
|---|---|---|
| 大規模法人部門 | 認定要件を満たした法人が認定 | 上位500法人に「ホワイト500」 |
| 中小規模法人部門 | 認定要件を満たした法人が認定 | 上位500法人に「ブライト500」、上位501~1500位に「ネクストブライト1000」 |
健康経営優良法人2026では、大規模法人部門3,765法人、中小規模法人部門23,085法人が認定されました。認定は年度単位で行われます。
参照:経済産業省「健康経営優良法人2026 認定法人が決定」/経済産業省「健康経営優良法人認定制度」
実際には何が見られる?2026サンプル調査票から読む評価ポイント
健康経営優良法人の申請書・健康経営度調査票は、単なる取り組み紹介ではありません。通常認定では認定要件への適合を確認し、ホワイト500、ブライト500、ネクストブライト1000等では、追加要件や相対評価にも用いられます。以下は、公式の健康経営優良法人2026サンプルを、著作権に配慮して要点のみ整理したものです。
| 対象 | サンプルから確認できる主な評価構造 |
|---|---|
| 大規模法人部門の通常認定 | 「必須」を全て満たし、制度・施策実行の選択17項目のうち14項目以上を満たす必要があります。経営方針、推進体制、保険者・産業保健職との連携、具体的計画、健診・ストレスチェック、教育、働き方、治療との両立、女性・高年齢者、食事・運動、長時間労働、メンタルヘルス、感染症、喫煙、効果検証、法令遵守などが確認対象です。 |
| 中小規模法人部門の通常認定 | 健康宣言と経営者自身の健診、担当者、具体的計画、受動喫煙対策、評価・改善、法令遵守等の必須要件に加え、選択17項目を3群に分け、①~③から2項目以上、④~⑩から2項目以上、⑪~⑰から4項目以上、計8項目以上を満たします。 |
| 中小規模法人部門の小規模事業者向け特例 | 対象となる小規模事業者は、同じ3群から各2項目以上、計6項目以上という特例要件です。対象判定は法人格・業種・常時使用する従業員数等によります。 |
| ホワイト500 | 通常の大規模法人認定要件に加え、方針の浸透、従業員パフォーマンス指標・測定方法の開示、健康経営の普及、経営レベルの会議での議題・決定、評価結果の一括開示への同意等の追加要件があります。上位500法人に付される冠です。 |
| ブライト500・ネクストブライト1000 | 通常要件に加え、選択17項目のうち16項目以上が必要です。ブライト500申請法人はQ33~41への回答が必須で、経営者・役員の関与20、組織への浸透10、PDCA35、健康風土の把握20、自社からの発信10、外部依頼による発信5のウェイトで相対評価されます。上位501~1500位がネクストブライト1000です。 |
申請内容を裏付ける資料の整備も重要です。大規模法人部門・中小規模法人部門の2026サンプルはいずれも、回答・申請内容を説明できる資料を申請期間最終日から2年間保存し、事務局等から求められた場合は1週間以内に提出するよう示しています。健康宣言、経営者健診、担当者任命、推進計画、研修資料、請求書・領収書、周知メール、会議記録、制度文書、実施写真、評価報告などを、回答項目とひも付けて保存すると確認に対応しやすくなります。
参照:健康経営優良法人2026 大規模法人部門サンプル(PDF) / 健康経営優良法人2026 中小規模法人部門サンプル(PDF)
どの期間が見られる?準備期間と健康経営優良法人2027の申請日程
評価対象は「申請時点の制度の有無」だけではありません。施策を実施した期間、前年度の参加率・健康指標、複数年の推移、効果検証、申請日時点の運用状況など、設問ごとに異なる時点・期間が確認されます。
| 資料 | 原則的な回答対象期間 | 実務上の読み方 |
|---|---|---|
| 大規模法人部門・2026サンプル | 特段の指定がなければ2024年4月1日から調査回答日まで。2024年度の実績を尋ねる設問は原則2024年4月~2025年3月。 | 参加率・健康指標等は年度実績を求める設問があり、一部では2022~2024年度の推移や、回答時点の状況も確認されます。 |
| 中小規模法人部門・2026サンプル | 特段の指定がなければ2024年4月1日から申請日まで。申請日時点で未実施の予定は審査対象外。 | 健診等は2024年度または指定された2025年度の期間、経営者健診は2024年4月1日以降など、設問別の指示に従います。 |
| 健康経営優良法人2027 | 2027の正式な調査票・認定要件に記載された期間が優先。 | 2026年8月16日時点では、申請日程・料金は公表済みですが、申請ページの一部要件資料は「昨年度のもの」と表示されています。正式公開後に必ず差し替えて確認します。 |
準備期間は3~12か月が実務上の目安
| 時期の目安 | 準備内容 |
|---|---|
| 申請前年の4月~3月 | 経営方針と推進計画を定め、健診、受診勧奨、ストレスチェック、教育、働き方、運動・食事、メンタルヘルス等の施策を実施。対象者・参加者・結果を記録し、証憑を保存します。 |
| 申請年の4月~6月 | 前年度データを集計し、課題・KGI・KPI・効果を確認。経営会議等で評価し、次年度計画を修正します。 |
| 申請年の7月~8月前半 | 前年サンプルでギャップを点検し、不足する社内規程、周知、会議記録、情報開示を整えます。中小規模法人は健康宣言事業への参加状況も確認します。 |
| 受付開始後 | 当年度の正式調査票・認定要件・FAQへ差し替え、回答と証憑を照合します。締切直前ではなく、社内承認とアップロード確認の時間を確保します。 |
健康経営優良法人2027の確定済み日程は次のとおりです。大規模法人部門の認定申請料は税込88,000円、中小規模法人部門は税込16,500円です。大規模法人部門は調査回答のみで認定申請をしない場合、認定申請料はかからず、フィードバックのみが提供されます。
| 時期 | 公式に公表されている予定 | 実務上の注意 |
|---|---|---|
| 申請前 | 新規ID発行は開始済み。既存IDがある法人は再発行不要。 | 初回申請法人は担当者自身がIDを取得します。代理でのID取得・申請は認められていません。 |
| 2026年8月17日 | 大規模法人部門・中小規模法人部門とも申請受付開始。 | 専用サイトから当年度調査票・申請書を取得し、前年サンプルとの差分を確認します。 |
| 2026年10月8日 | 大規模法人部門の新規ID発行期限。 | 申請締切の前日です。新規法人は早めに取得します。 |
| 2026年10月9日 17時 | 大規模法人部門の申請締切。 | アップロード完了を画面で確認し、提出ファイルを保存します。 |
| 2026年10月15日 | 中小規模法人部門の新規ID発行期限。 | 健康宣言事業への参加を申請前に済ませます。 |
| 2026年10月16日 17時 | 中小規模法人部門の申請締切。 | 回答と保存資料を最終照合します。 |
| 2026年11月上旬ごろ | 請求書送付。 | 請求先と社内支払手続きを事前に確認します。 |
| 2026年12月31日 | 申請料の振込期限。 | 未払いを防ぐため、請求書到着後に早めに処理します。 |
| 申請締切後~2027年2月下旬ごろ | 審査・確認(公式ページは審査開始日を個別に明記していません) | 照会や資料提出依頼に対応できるよう、申請担当者と証憑保管場所を固定します。 |
| 2027年2月下旬ごろ | 内定。 | 公式発表前の社外発信は、事務局の案内に従います。 |
| 2027年3月 | 健康経営優良法人の発表。 | 認定後も翌年度に向けて施策と証憑の記録を継続します。 |
| 2027年4月中旬ごろ | 中小規模法人部門の評価結果送付。 | 公式ページでは「評価結果送付」とされていますが、取り組み内容のフィードバックはブライト500申請法人のみです。大規模法人部門は認定後にフィードバックが提供され、送付時期は明記されていません。 |
申請日程と評価対象期間を混同しない
参照:ACTION!健康経営「大規模法人部門の申請」 / ACTION!健康経営「中小規模法人部門の申請」 / ACTION!健康経営「新規IDの取得」 / 2026大規模サンプル(PDF) / 2026中小規模サンプル(PDF)
健康経営銘柄を目指す必要はある?
結論からいうと、すべての企業が健康経営銘柄を目指す必要はありません。健康経営銘柄は、経済産業省と東京証券取引所が、東京証券取引所の上場会社の中から健康経営に優れた企業を選定・紹介する制度です。健康経営銘柄2026では44社が選定されました。
上場企業が投資家との対話や人的資本情報の開示を強化する目的で目指す意義はあります。一方、非上場企業や多くの中小企業は対象外であり、認定取得の有無にかかわらず、自社の健康課題に合った健康経営を実践することが先です。選定基準や財務要件は年度ごとに見直されるため、当年度の健康経営度調査、選定基準、FAQを確認します。
東京都の健康企業宣言:銀の認定・金の認定
東京都の制度では、公式案内上「東京都に所在している医療保険者(協会けんぽ東京支部、健康保険組合等)に加入している企業」が参加できます。銀の認定は各保険者、金の認定は健康企業宣言東京推進協議会が行います。全国共通の健康経営優良法人とは別の制度です。
STEP1では、「100%健診実施」「健診結果活用」「特定保健指導活用」「健康づくり環境整備」「禁煙」の5項目を必須とし、食、運動、心の健康、性差に応じた健康課題、睡眠、歯・口腔、飲酒から選択して取り組みます。宣言から6か月以上取り組み、採点結果が80点以上となれば銀の認定を申請できます。
STEP2では、健診・重症化予防、健康管理・安全衛生活動、メンタルヘルス対策、過重労働防止、感染症予防、健康経営の6領域に取り組みます。宣言から6か月以上取り組み、80点以上となれば金の認定を申請できます。
健康経営に資格は必要?関連する資格・認定研修と取得方法
健康経営を始めるための共通の必須資格はない
企業が健康経営を始めたり、健康経営優良法人へ申請したりするために、全社共通で必須となる資格はありません。経営者、人事・総務担当者、健康管理担当者が中心となり、必要に応じて産業医、保健師、看護師、衛生管理者、社会保険労務士、健康保険者等と連携します。
一方、法令上の産業保健体制には、事業場の規模・業種に応じた選任要件があります。民間の認定研修と、法定資格・法定選任を混同しないことが重要です。
| 名称 | 向いている人 | 取得・受験の概要 |
|---|---|---|
| 健康経営アドバイザー | 経営者、人事・総務、健康管理担当者、初めて体系的に学ぶ人 | 東京商工会議所の認定研修。受講資格なし。動画・テキストで学び、IBT10問中7問以上で認定。受講料8,800円、認定期間2年。 |
| 健康経営エキスパートアドバイザー | 中小企業への課題診断、改善提案、実践支援を行いたい人 | 健康経営アドバイザー認定に加え、所定資格または概ね1年以上の関連実務が必要。知識確認テスト、ワークショップ、後日の効果測定を経て認定。 |
| メンタルヘルス・マネジメント検定 | 経営幹部、人事労務、管理職、一般従業員 | Ⅰ種(マスター)、Ⅱ種(ラインケア)、Ⅲ種(セルフケア)。学歴・年齢等の受験制限なし。 |
| 衛生管理者等 | 法定の安全衛生実務を担う人 | 健康経営の民間認定ではなく、労働安全衛生法に基づく資格・選任制度。事業場の規模・業種に応じて確認。 |
健康経営アドバイザーの取得方法
申し込みと支払い
動画とテキストで学ぶ
効果測定を受ける
認定証を取得し、更新する
参照:CBT-Solutions「健康経営アドバイザー」/東京商工会議所「健康経営アドバイザー」
健康経営エキスパートアドバイザーの取得方法
申込時点で健康経営アドバイザーの認定を受け、所定の資格を保有するか、健康・医療・保健、経営、人事労務、健康経営の実務に概ね1年以上携わっていることが必要です。
- 知識確認テスト:CBT多肢選択式50問・90分、80点以上で合格
- 受験料:テキスト付き7,700円、テキストなし5,500円(税込)
- ワークショップ:Zoomによる1日研修、受講料22,000円(税込)
- 認定:ワークショップ後の効果測定(後日提出課題)で80点以上となると認定
- 認定期間:2年間。更新制度あり
2026年度の知識確認テストは、申込期間が2026年7月1日~8月13日、受験期間が8月14日~8月27日です。次回以降の日程は公式案内で確認してください。
参照:CBT-Solutions「健康経営エキスパートアドバイザー研修」/東京商工会議所「ワークショップ研修要綱」/東京商工会議所「健康経営エキスパートアドバイザー」
メンタルヘルス・マネジメント検定
職場のメンタルヘルス対策を体系的に学ぶ検定です。Ⅰ種は人事労務管理スタッフ・経営幹部向け、Ⅱ種は管理職向けのラインケア、Ⅲ種は一般従業員向けのセルフケアです。
| コース | 主な対象・目的 | 2026年度受験料 |
|---|---|---|
| Ⅰ種(マスターコース) | 人事労務管理スタッフ・経営幹部/全社的な施策の企画・推進 | 11,550円 |
| Ⅱ種(ラインケアコース) | 管理職/部下への対応、職場環境改善、相談対応 | 7,480円 |
| Ⅲ種(セルフケアコース) | 一般従業員/自らのストレスへの気付きと対処 | 5,280円 |
2026年度の次回公開試験
参照:メンタルヘルス・マネジメント検定「2026年度受験要項」
どれを選ぶべき?
- 自社で健康経営を始めたい:健康経営アドバイザーで全体像を学ぶ。
- 外部支援や高度な課題診断を行いたい:要件を満たしたうえでエキスパートアドバイザーを検討する。
- 管理職のラインケアを強化したい:メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種が使いやすい。
- 法定の安全衛生管理を担う:事業場の業種・規模に応じ、衛生管理者や衛生推進者等の要件を確認する。
健康経営の始め方:実践の6ステップ
健康経営は、大きな予算や認定取得から始める必要はありません。法令上の土台を整え、自社の優先課題を絞り、小さく実行して改善することが重要です。
経営課題と目的を明確にする
法令遵守と推進体制を点検する
データと従業員の声から課題を把握する
戦略マップとKPIを作る
優先順位を決めて施策を実行する
評価し、次の改善につなげる
課題別の施策例
| 主な課題 | 施策例 | 評価例 |
|---|---|---|
| 健診後の未受診・重症化 | 就業時間内の受診配慮、個別受診勧奨、保健指導、受診状況の確認 | 要受診者の受診率、未治療者割合、リスク指標 |
| 長時間労働・疲労 | 業務量の見直し、会議削減、勤務間の休息確保、管理職へのアラート | 月80時間超人数、平均残業、睡眠・疲労、休職 |
| メンタルヘルス | 相談窓口、管理職研修、職場環境改善、復職支援、ハラスメント対策 | 相談窓口認知率、高ストレス者割合、休職・再休職、職場風土 |
| 運動不足・座位時間 | 短時間体操、歩行企画、階段利用、会議の休憩、職場レイアウト改善 | 参加率、歩数、座位時間、運動習慣者割合 |
| 女性の健康課題 | 管理職教育、相談先、休暇・勤務配慮、検診情報、職場環境整備 | 制度認知率、利用しやすさ、欠勤・離職、従業員の声 |
| 治療と仕事の両立 | 相談窓口、主治医・産業医との情報連携、柔軟な勤務、復職・配慮手順 | 制度認知率、就業継続、復職後定着、本人の納得度 |
中小企業向け:最初の90日プラン
健康経営のKPIと効果測定
参加人数だけでは、施策が健康課題や経営課題の改善につながったか判断できません。健康投資から成果までのつながりを戦略マップで整理し、複数段階のKPIを設定します。
| 段階 | 指標の例 | 見るポイント |
|---|---|---|
| 実施・到達 | 健診受診率、研修受講率、保健指導利用率、相談窓口認知率 | 施策が対象者へ届いたか |
| 認知・行動変容 | 受診行動、運動・睡眠・喫煙行動、管理職の対応、制度利用意向 | 理解や行動に変化があったか |
| 健康・労務 | 有所見、ストレス、睡眠、欠勤、休職、長時間労働、労災 | 心身の状態や労務リスクがどう変化したか |
| 組織・経営 | プレゼンティーイズム、ワーク・エンゲージメント、離職、採用、顧客対応 | 経営課題への波及が見られるか |
KPI設定で外せない5つのポイント
- ベースラインを取る:施策前の値がなければ変化を評価できません。
- 分母を明確にする:「参加率80%」が全従業員中か、対象者中かを明記します。
- 短期と中長期を分ける:参加率は数か月、健康状態や離職は複数年で見ます。
- 数値だけで判断しない:従業員の声、参加しにくい理由、現場の運用負荷も確認します。
- 少人数集計に注意する:個人が推測される小さな集団は、集計単位や開示方法を見直します。
健康経営の前に押さえる法令と2026年以降の最新動向
安全衛生管理体制は「会社全体」ではなく事業場単位で確認
| 常時使用する労働者数 | 主な確認事項 | 補足 |
|---|---|---|
| 50人以上 | 産業医、衛生管理者、衛生委員会 | いずれも全業種の事業場で必要。安全管理者・安全委員会は業種や規模によって要件が異なる。 |
| 10人以上50人未満 | 安全衛生推進者または衛生推進者 | 業種に応じて選任。選任すべき事由が生じた日から14日以内に選任し、氏名を関係労働者へ周知する。 |
労働者数50人未満の事業場では安全委員会・衛生委員会の設置義務はありません。ただし、委員会を設けていない事業者は、安全または衛生に関する事項について、関係労働者の意見を聴く機会を設けるようにしなければなりません。
参照:厚生労働省「産業医」/厚生労働省「衛生管理者」/厚生労働省「安全衛生推進者(衛生推進者)」/厚生労働省「衛生委員会」
2026年4月1日:治療と就業の両立支援が努力義務に
改正労働施策総合推進法により、疾病や負傷の治療を受ける労働者について、相談に応じて適切に対応するための体制整備など、治療と就業の両立を促進するために必要な措置を講じることが事業主の努力義務となりました。
2026年4月1日:高年齢労働者の労働災害防止措置が努力義務に
高年齢労働者の特性に配慮した作業環境の改善、作業管理など、労働災害を防止するために必要な措置を講じることが事業者の努力義務となりました。厚生労働省の指針を踏まえ、転倒・腰痛等のリスク、照度や段差、作業姿勢、設備、教育、健康状態に応じた配慮を点検します。
2027年4月1日:集団分析は個人を識別できない方法で
ストレスチェックの集団分析そのものは引き続き努力義務ですが、2027年4月1日から、特定の個人を識別できない方法で実施することが労働安全衛生規則に明記されます。これは従来の解釈を明文化する改正です。個人を識別できる方法による集団分析は、努力義務を履行したことにならず、プライバシー保護の観点からも適切ではないと示されています。少人数の部署では、集計単位や開示方法を見直してください。
2028年4月1日:50人未満の事業場にもストレスチェックが義務化
2025年に公布された改正労働安全衛生法により、これまで当分の間努力義務とされていた労働者数50人未満の事業場にも、ストレスチェックの実施が義務付けられ、2028年4月1日に施行されます。小規模事業場は、実施者、外部委託、情報管理、高ストレス者への医師面接指導の体制を早めに整えましょう。なお、集団分析自体は努力義務です。実施する場合は、個人を識別できない方法で行い、結果を職場環境改善につなげます。
参照:厚生労働省「ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策」
健康情報は必要最小限に扱う
健康診断や心身の状態に関する情報の多くは、個人情報保護法上の「要配慮個人情報」に当たる機微な情報です。事業者は、労働者の健康確保に必要な範囲で収集し、目的の範囲内で保管・使用するとともに、事業場の取扱規程を定め、労使で共有することが求められます。
上司へ病名や詳細な検査値を広く共有するのではなく、原則として業務上必要な配慮事項に絞ります。閲覧権限、保管方法、保存期間、廃棄、外部委託先の管理まで明文化します。
参照:厚生労働省「健康情報等の取扱規程を策定するための手引き」/厚生労働省Q&A「健康診断やストレスチェックの情報管理」
まとめ
健康経営とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で捉え、戦略的に実践することです。単なる福利厚生や健康イベントではなく、経営方針、推進体制、データに基づく課題把握、施策、KPI、評価・改善までを一貫させることが重要です。
認定制度や資格・認定研修は、取り組みを体系化し、社内外へ説明するうえで役立ちますが、取得そのものを目的にしないことが重要です。まず法令遵守と健康情報の適切な管理を確実にし、自社の優先課題を1~2個に絞って、小さく始め、効果を確認しながら改善しましょう。
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